第3章 距離
それからというもの、次々とやって来る見慣れた場面に茅野は
最初の二人をなんとかしよう、という意識はもうなく
邪魔をしてはいけない。
そう思い、ただ見つめて過ごすだけになってしまった。
時折、行き過ぎた好意を止めたり
出久の怪我の手当てや慰めをする程度。
勝己には何も言わない。
言ってもやり過ぎだ、や
個性を使ってそこまでするのはよくない、というような事だけ。
それ以上言ってしまえば、何かが崩れる気がしたからだ。
そして、
立ち入り禁止の場所へみんなで探険しに行ったとき。
茅野はこの時の出久の行動で
勝己が一度目の屈辱を覚えるとわかっていた。
勝己が川に落ちて、
大丈夫だと言う勝己に私達は上がってくるのを見守る。
そんな中、出久だけが心配して助けに行き、手を差し出す。
勝己は、自分が一番すごくて、
出久が一番すごくない
そう思っている。
そして、その自分が誰かに助けられる、などあってはならないのだ。
助ける、ということが
下に見られている、ということだと思っているから。
それからというもの、急激に二人の関係は変化していった。
勝己の、出久へのいじりは
自分の方が上だと言わんばかりのいじめへと変わり
二人は対等な関係ではなくなっていくのだった。