第10章 進む
そして部屋に入ってすぐ、楓風は勝己に電話した。
『急にごめんね!!優勝おめでとう』
「…こんな一位は意味ねぇんだよ」
『…勝己の悔しい気持ちも、痛いほどわかる。
でも、氷を使っての全力だったし、焦凍なりに考えて、大切な人を助けるために選んだ結果だったから、許してあげて…ね?』
「…次はナメプ野郎に炎使わせて、完膚なきまでの一位になる!!」
『うん、もう大丈夫なはず。
…頑張ってね!!
…それで、話があって。』
「…この前の返事か」
『うん。…ごめん。やっと、自分の気持ちに気付けたの。
だから、勝己とは…付き合えない』
「…そうかよ」
『でも、私、勝己と出会えて、友達になれて
ほんとによかったと思ってる…』
「おい、何で終わらせようとしてんだ」
『へ?』
勝己の言葉の意味が分からず、思わず聞き返す。
「これからも…と…もだちだろが!
俺は…お前が笑ってる顔見られたらそれでいんだよ
クソ、恥ずかしい
だからって好きになるのやめるわけじゃねぇからな、口説き殺したるわ、覚悟しとけや!!」
勝己の、ぶっきらぼうだけど優しい声を聞いて、
心が暖かくなっていくのがわかった。
『…!!うん、ありがとう』
私達は、笑いあった。
そこにはもう、気まずい空気なんてなかった。
* * *
焦凍<日曜日の9時に迎えに行く>
<りょうかい!!>楓風
焦凍<今日は早く寝ろ>
<はーい>
<おやすみ!!>楓風
焦凍<おやすみ>
勝己との電話を終えて、焦凍からのメッセージに返信した。
満ち足りた、幸せな気分のまま
何だか焦凍はお母さんみたいだな、と思いながら言われた通り、早めに眠りについた。