第8章 すれちがい
顔が赤くなっていてよく分からないまま家に入ろうとすると、鍵が空いていることに気付いた。
(…え、そう言えば電気もついてる…!!
なんで!?ちゃんと戸締まりしてから出掛けたのに…。
まさか…どろぼう!?)
不安になった楓風は、辺りを見回すと、勝己が自分が家に入るまで待っていてくれているのが見えた。
『か、勝己…!!あの…』
* * *
「…ほんとに戸締まりしてから来たんか」
『しーっ!!泥棒いたら気付かれちゃうよっ!!』
どうしても不安でならない楓風は、勝己に一緒に家に入ってもらうことにしたのだ。
もし泥棒がいても撃退できるように。
(勝己怖いから、泥棒も逃げちゃうもんね!!)
すると、リビングの方から何やら声が聞こえて、灯りもついているのが見えた。
(…ん?まさか)
「だあぁぁぁもういいわ、おい何してんだクソが!!!!」
コソコソしているのに疲れたのか、大声を出してリビングのドアを勢いよく開け、突っ込む勝己。
『あ、ちょ…』
リビングを見ると、そこには
楓風の両親がいた。
「…あ"!?」
「あら、お帰りなさい!!
何々、彼氏連れてきたの??」
にこにことしながら聞いてくる母。
『…か、帰って来てたの…?』
「そうよ、楓風のためにわざわざお休み取ってきたのよ!!だって、体育祭でしょ??」
「……おい、楓風てめぇ……」
『……!!!!!
お、お母さんごめん!!勝己のこと送ってくるねえへへへへ…』
「せっかく来たんだからご飯食べていってもらえばいいじゃない!!
勝己くん、ご飯出来るまで楓風と部屋で遊んで来るといいわ」
ニコニコと先程から表情を一切変えることなく、とんでもないことを言い出す母。
楓風は、あまりの衝撃にフリーズしてしまっていた。
「…すいません、急にお邪魔してしまって…
お言葉に甘えてご飯頂いて行きます」
そして急に猫を被って親にていねいに話しだし、ちゃっかり了承している始末。
「楓風、行くぞ」
そう言ってリビングから出ていく勝己の顔は、黒い笑みが溢れていた。
(……なんか、嫌な…予感が…)
引きつった笑みを浮かべながら、勝己の黒い圧におされて部屋へ案内した。