第8章 すれちがい
楓風は驚きのあまり、固まって動かなくなった。
『………!?!?!?』
「顔が近くにあったからした。」
当たり前だろ、とでもいうような顔をする爆豪。
『………なっ………!?』
「…相談したのと今日のお礼、今のでいいわ
これで勘弁してやるんだから感謝しろや」
と言うと、固まって動かない楓風を放置して帰って行った。
『ええぇぇぇぇぇえ!!!』
(なに、これが普通なの!?キスはもう普通なの!?
え、なんか当然のことみたいな言い方してたけど!なに!?私が調子にのって勝己のこと煽ったから…!!)
顔を真っ赤にして家に入っていく楓風を、遠くから楽しそうに、勝ち誇ったように見つめる爆豪だった。
そして二人は気付かなかった。
窓から二人を見ていた、轟の姿に。
(なんで楓風爆豪と遊びいってんだ…
…それにキスしてやがった
…まさか付き合ったのか?
ダメだ、嫉妬でおかしくなりそうだ
気になって練習にも集中出来ねぇ…
…俺が、あいつを突き放したからか)
楓風のためにしたことが、逆効果だったことにやっと気付く。
だが、気付くのがもう遅かった。
垂直に交わっていた二人の線は、
いつの間にか、
まるで二本の平行線のように
どこまで行っても交わらなくなっていた。