第8章 すれちがい
あれから、あからさまに焦凍に避けられてしまい、一言も話さないまま日曜日になった。
楓風は10時に目を覚ますと、準備を始めた。
新しく買ってあったワンピースを着て、髪を軽く巻き、薄くメイクをして、お気に入りの靴を履いて家を出た。
渋谷駅に着くと、10分前なのにもう勝己がいるのが見えた。
『…ごめん、待ってた?』
「俺も今来たとこだわ、………」
勝己に声をかけると、スマホからこちらに視線を移したままフリーズしてしまった。
『…変?』
「……っ、服は可愛い」
といつものようにさりげなく貶されたが、横を見ると耳が赤いのがわかった。
勝己は、赤いアディダスのパーカーに黒いブルゾン、薄めの色のダメージジーンズとお洒落で、意外にもセンスがあることが判明した。
(…こいつ、ほんと口悪いところ意外完璧なんだよなぁ)
『ねぇ、今日どこ行くの?』
「…お前が好きそうなところ
いいからついてこいや」
とそのままついていくと、そこは雑誌やSNSで話題になっててずっと行きたかったパンケーキ屋さんだった。
『…え!!ここ…ずっと来たかったとこ!!
何で…!?』
「…前なんかで見たんだよ
それにお前、甘党だろ」
知っててくれたことに嬉しいようなよく分からない気持ちになった。
中は、さすが人気なだけあって、すごく可愛い。
頼んだパンケーキも、可愛いし美味しいしで大満足だった。
「一口よこせや」
『えー、しょうがないな、楓風ちゃん優しいからあげちゃう……あ!苺落ちる早く食べてぁああ』
「お前フォークに刺すのも下手くそなんか!!
手ぇ震えてんだよ」
とお互いのをシェアしたり、写真を撮ったりした。
その後は勝己に似合う服を選んで貰ったり、ゲームセンターで遊んだり、カラオケに行ったりとすごく充実していた。
『勝己あんた、出来ないものないわけ!?』
センスもあって、UFOキャッチャーも得意で、歌も上手いということが分かり、楓風はなんとなく分かってはいたものの、びっくりしていた。
「ハッ、俺に出来ねぇもんはねぇ」
『見事に悉く負けまくっちゃった…
次来たときは絶対負けないからね!!歌も練習してくるもん!!』
「そーかよ、せいぜい100点取れるように頑張れや」
楽しくて、あっという間に一日が過ぎてしまった。
もう外も暗くなってきていて、二人は帰ることになった。