第11章 天然と鈍感
そして自分への指名をしてくれている事務所がリストアップされた紙が配られ、楓風はサッと目を通していく。
すると、ひとつの事務所が目に止まる。
よく見慣れた、そして聞き慣れたその名前。
(…え、これって…!!)
『し、焦凍!!
…その顔してるってことはもしかして焦凍も…??』
「…あぁ。楓風も来てんのか
何考えてんだあいつ…」
『…私、行こうと思う
お父さんのとこ』
「…俺もだ」
『え!?でも…!!』
「もともとそのつもりだ
あいつがなぜNo.2なのか、この目で見て確かめたい」
『…そっか、無理はしないでね!!
その、わ、私も一緒だから癒せるように頑張るね!!』
「…ありがとな」
そして楓風達は、一緒に
"エンデヴァー事務所"
と書いて提出した。
* * *
『職場体験、緊張するなぁ』
「そうだな」
『でも楽しみ!!
焦凍と一緒だもん』
「…そうだな」
そういって微笑む焦凍。
楓風はお父さんのことでまた落ち込むのではと心配したが、
もう今までとは違って前向きな表情をする焦凍を見て安心した。
『…ねぇ私達ってさ』
「あぁ、いい忘れてて悪ぃ
よく考えたら俺は、大事なことを言ってなかった。」
言いたい事が伝わったようで、立ち止まって向かい合う形になった。
焦凍が、真剣な目をする。
「楓風。
俺は、楓風のことが好きだ。
幼馴染みとしてじゃねぇ。
…だから、俺と付き合ってくれ。…ダメか?」
『ダメ、
なわけないじゃん!!
私もっ、焦凍が好きだよ、大好き!!』
そう言って、どちらともなくキスをした。
唇が離れて顔をみると、
お互い頬が赤くなっているように見えた。
夕日に照らされているからか、
はたまた照れているからか。
どちらなのかははわからないけど、
指を絡め合わせて
再び歩き出した。