第1章 真夏の旅人
…あれ?
暫くすると先程の強風がやみ、身体を押しやられる感覚が消えた。
『もーーマジでなんなん?!』
顔の前でクロスしていた手を降ろし、ぱっと目を開き、御神木を見て文句を言う。
―――――― え…?
私は自分の目を疑った。
(え、なにこれ?これ、御神木?よね。
なんで、こんなに傷ついてるの?
…てか、なにこれ…手裏剣??)
まるでどこかの映画村に迷い込んだのではないかと思うほどリアルな手裏剣が数枚、御神木に刺さっている。
こんなもの、先程までは無かったのに。
『まさかさっきの突風でどっかから飛んできたとか? なんてまさかー…
「誰だお前は!!!!」
突然の声に、さきはビクッと大きく身体を揺らした。
恐る恐る振り返ると、そこには、何やら動物の面をつけた人が数人、さきに刀やらクナイやら手裏剣を構え、敵対心の塊を露わにして対峙していた。
『ひっっ!!!!だっだれってあんたらこそ誰?!?!』
「我らは木ノ葉隠れの暗部。 近くで修行中、妙なチャクラを感じたため飛んできたが…見慣れない服装だなお前。 どこの里の抜け忍だ? どこから侵入した。」
え、まって、なに?ついていけない。
ちゃく…何?さと…?
ヌケニン?ポ●モンか何か?
しかし、一気に駆け巡る思考を何とか整理しようとするも、向けられる刃物には流石に狼狽えてしまう。
『わ、私はこの寺の隣のアパートの住人です! 御神木を見に、たまたま境内へ入っただけで…何も悪いことはしてないですっ! この手裏剣みたいなのだって私のじゃない!!』
「寺?何を言っている。ここは第三演習場だ。 寺などここにはない。 しらを切るのもいい加減にしろ!」