第71章 meow
「お前たちおやめよ。この人たちは敵じゃないんだから」
猫バアが猫たちに注意した。
「んー…ちょっとまずかったかな?」
カカシは猫たちの様子に、マスクの下で苦笑いを浮かべる。
『んもう。猫たちの気持ちになってよねカカシのバカっ』
「バカって…あのね…」
オレはお前に教えるためにやったんだけど…とひとまずカカシは突然猫に威嚇され始めた自分の忍犬たちを宥めて説明を求めるパックンに事情を話した。
「なるほど、あの後すぐに忍猫探しに来たのか。…そしてここが空区の。
しかし、初めて来て初めて経験するのが猫からの威嚇なんて全く酷い話だ」
『なんかごめんね?パックン』
さきは膝に手をつき、腰を屈めて謝罪した。
「さきが謝る必要ないだろう?…が、カカシは術を教えていたんだろう。ちゃんと手順は覚えたのか?」
『ああ、そうやね!うん、多分大丈夫…』
さきはそういうと、カカシの手本に倣って思い切って自身の親指の先をガリッと噛み切った。
『確か…亥、戌、酉…』
さきはカカシが行っていた手順を小声でつぶやきながらゆっくりと印を組んでいく。
間違えないよう、一つひとつ確実に、またチャクラもなるべく丁寧に練り上げて…
「ああ、それと言い忘れてたけど、口寄せ動物と契約していないときはむやみに術を使わないよーにね。
高度な時空間忍術だから、何が起こるかはわからな…」
『口寄せの術っ!』
……カカシの忠告は、一足遅かったようだ。
ボフン!と気持ちの良い音と白煙が上がった直後、「なっ!」と声を発したカカシとパックン…そして少し引きつった笑顔の猫バアの目の前から、さきの姿は跡形もなく消えていた。
「さき!」
「おいっ」
真面目なさきは、それはそれは丁寧に、そしてしっかりとチャクラを練っていた。
それが幸にも不幸にも、口寄せの術を初めて試してみたにも関わらず、大成功をおさめてしまった。
「…あのお姉ちゃんはどこに行ったんだい?」
と猫バア。
「…どこでしょうね」
とカカシ。
「バカタレ……」
そしてパックンの呆れた声がこだまして、カカシは二度目の「バカ」という言葉にこめかみのあたりがツキリと痛んだ気がした。