第70章 予選終幕
「そうか……サスケの病室で、カブトに薬を盛られて気絶してたのよ、お前」
『………そうや…あの暗部…!』
さきは少しの間ぼうっとした目で、上から覗き込むカカシの顔をぼんやりと眺めていたが、だんだん冴え渡る感覚と記憶に、勢いよく飛び起きた。
あまりの勢いに、頭突きされてしまうのではないかと思わずカカシも体を仰け反る。
「こら、いきなり動くなよ」
『ご、ごめん!サスケくんは無事??ちょっと…あんまよく覚えてないけど私と一緒にいたあの暗部…』
「ああ。あれがカブトだ。…まず大蛇丸の手先で間違いない。」
『やっぱり……ごめん、捕まえるどころか私…』
視線を落として悔いる彼女は、布団を両手でギュッと握りしめた。
だが無理もない。
本体は完全に気配を消し、本物の死体に紛れていたのだから。
ここは病院、しかもカカシが手配した暗部がサスケを護衛しているともなると、余計にさきの警戒心だって薄れるはずだ。
カカシはさきに寄り添うように優しい声で語った。
「いや…オレもヤツを取り逃した。さきが悔やむ事じゃないよ。
オレの方こそ、もう少し早く来ていればお前が倒れることもなかったのに…すまない」
『そんな、謝らないでよ…私が勝手にここに来たんやから』
「………カブトと大蛇丸については、今後も捕らえるチャンスはある。
敵は意外にも慎重で、しかも何か策があるようだった。
狙いはサスケ……本戦までの1ヶ月、オレたちもこのままじゃな…」
『うん…』
教え子を育てる事も大切だが、自分たちがあまりにも戦いから遠退きすぎていたことも事実だ。
もうのんびりしている暇はない。
そう思った。