第70章 予選終幕
ガラガラと病室のドアを開けると、酸素マスクをつけ、目を包帯で巻かれて眠らされているサスケの姿があった。
さきは近くにあった丸椅子をベッドの傍によせて、浅く腰をかけた。
そっとサスケの額に手を当てると、自分の熱よりもずっと高い体温が伺えた。
――――ーかわいそうに…
額にかかる前髪を梳くように撫でると、サスケは擽ったそうに僅かに顔を動かした。
「本戦は、サスケくんとナルトくんの二人やよ…サクラちゃんも、よく頑張ってた。」
聞こえていないとは思うが、さきはそのままサスケに話しかけ続けた。
その後ろには、暗部の人が立っている。
『サスケくんには、沢山の仲間がおるよ……こんな危ない力に頼らなくても、どんどんキミは強くなれるから…仲間を信じて…何より自分のことを信じて…大蛇丸に自分を売るような真似したら絶対にアカンよ…』
――――ー そう。復讐心に負けないで。
(キミはまだ成長の途中なんやから… 一緒に強くなろうね…)
そう心の中で伝え、額を撫でる手と逆の手で、サスケの手をぎゅっと握った。
―――その時だった。
『!? 痛……っ』
首元に、チクリとした鋭い痛みを感じた。
と、ほぼ同時にどんどん意識が薄れていく。
ぼやける視界には、小さな注射器のようなものが映った。
――――ー なんで?…この人…暗部でしょ……?…一体何して……
「心配しなくとも、彼は大蛇丸様に力を求めることになりますよ…さきさん」
『あ…んた…………』
さきは聞き覚えのあるその声のその先の、面を付けた男を見たすぐあとに、サスケの眠るベッドに突っ伏した。