第69章 予選開幕-5-
リーが運ばれたあとも、場内に立ち尽くすガイは酷く落ち込んでいた。
リーの体がボロボロになる前に試合を止めることが出来なかった自分を責めているようだった。
カカシは、チラと自分の教え子であるナルトに視線をやる。
(―――さっきは偉そーに言ったが…よくよく考えてオレもガイの立場だったとしたら…やっぱり止めることはできなかっただろうな…)
自分の教え子ほど、負けるだなんて思いたくないし、夢や目標を叶えてやりたいものだ。
カカシはガイの暗い背中に、なるべくそっと声を掛けた。
「…ガイ 次の試合の邪魔になる。ホラ、上行くぞ」
「………ああ………」
返ったきた声は、驚くほどとても静かで、小さかった。
次の試合は、その後直ぐに行われた。
アスマ班のチョウジと、音隠れの里のドス・キヌタだ。
チョウジは、秋道一族秘伝忍術を駆使して戦いに挑んだが、人体に直接衝撃音を伝えられ、残念ながらほんの僅かな時間で試合の決着がついた。
「えーー ではこれにて“第二の予選”…全て終わります!」
ハヤテのその合図で、本戦進出が約束された、サスケを除く七名が整列した。
カカシらが上からそれを見守る中、カカシの隣にいたサクラが神妙な面持ちで小さく口を開いた。
「…先生」
「ん?」
「…私…聞きたいことが…」
「……サスケのことか?」
サクラは聡い子だ。
それに、仲間のことをよく見ている。
さきが言っていたように、特に惚れた相手のサスケのこととなると、今は心配で堪らないだろう…
安心させてやりたいのは山々だが、それにしては心配事が多いのも事実だ。
―――ふと、病室に置いてきたサスケのことが気になった。
なんならヒナタについていったさきも、あれから全く帰ってこないのも心配だ…
「………………んー」
――――ー こういう時こそ、嫌な予感というのは当たるものだよなぁ…
そう思っては居てもたってもいられず、カカシは病室に向かうことにした。
「サクラ、オレはちょっと席外すから本戦の内容しっかり聞いといてくれ」
「えっ?…う、うん…?」
物言いたげなサクラには申し訳なかったが、そのまま瞬身の術で足早にサスケの寝ている病室へと向かった。