第69章 予選開幕-5-
杜門を開いてからは、あっという間だった。
更にスピードを上げたリーは、一度己の身を我愛羅にぶつけ、その瞬間両腕のバンデージを相手の体に巻きつけた。
身体中を纏っていた砂の鎧も殆どが砕け、我愛羅の砂のガードも全く追いついていない。
リーは腕から伸びるバンデージを勢いよく引き付け、拳と脚を標的にめり込ませた。
「裏蓮華!!!」
人体から発せられたとは思えないような衝撃音と共に、崩れた会場の瓦礫が容赦なく宙を舞う。
カカシはかなり悪い視界の中、我愛羅の姿を目で追った。
あの大業をキメられたのだ。大抵の忍は、恐らくここで動けまい。
が、しかし、我愛羅はその更に上をいった。
彼の体が完全に地面に叩きつけられる直前、その背に負っていた瓢箪が瞬く間に砂と化したのを、カカシは見逃しはしなかった。
ドゴオ!!!
地面が割れる音と、砂埃が立ち込める。
自身の繰り出した裏蓮華の衝撃に耐えきれなかったリーの体は既にボロボロだ。
筋肉や腱が切れ、潰れ、骨が折れて砕ける。
着地もマトモに出来ずに体が思い切り投げ出された。
我愛羅は…先程の瓢箪の砂をクッションのように操り、受けた攻撃の威力をいなしていた。
ヨロヨロと体を起こすリーに、我愛羅の砂が襲い掛かる。
手足に纏わりついたそれは、我愛羅の手の動きに連動し操られた。
「砂縛柩!!」
手がギュッと固く握られた途端、砂の中で ベキ!ゴキ!!と身の毛もよだつ恐ろしい音が鳴り響いた。
それは、リーの腕と足が折れた音だった。
「ぐわああああ!!!」
更に大量の砂がリーに襲いかかった。
間違いなく、我愛羅はリーを殺す気だ。
「ガイ!」
――― ドバシュ!!!!
その音と共に、砂の中から現れたのは、カカシが名を呼んだガイに他ならなかった。
リーは気を失い、地面に横たわっている。
「ここまでだ」
そう我愛羅にガイは目で訴えかけた。
つい先程まで笑顔で、そして祈るようにリーの試合を見守ったいたガイがここで試合を止めたのは、忍術の使えないリーの最大の武器である手足が使えなくなった事により、これ以上試合を続けさせてもそこには「死」しかないと判断した為だろう。
ハヤテにより勝ち名乗りを受けた我愛羅は、リーとガイの二人に背を向けその場を去ろうとした。