第69章 予選開幕-5-
確かに、教え子というものは、あまりに可愛く、あまりに手を焼きたくなるような存在だということは、カカシの己が身をもっても体感しているために否定をしたりはしない。
強くなりたいという思いをなんとか叶えてやりたいものなのだ。
しかし、
「あの子がお前にとって何なのかまで詮索するつもりはないし、私情を挟むなとは言わないが…限度ってもんがある……見損なったぞ…ガイ!」
「お前が…あの子の何を知ってる……あの子には死んでも証明し、守りたい大切な物がある。だからオレは…それを守れる男にしてやりたかった…ただそれだけだ…」
「…ガイ…今あの子は八門遁甲のいくつまでの門を開ける…?!」
「五門だ」
裏蓮華という大技は、三門の生門を開くところからはじまる。
先程、妙に著しい体力回復を見せたのは、既に二門までをこじ開けていたからということだ。
これは努力だけでどうにかなるものでは無い。
カカシとガイが観覧席でやり合っているうちに、リーは着々と裏蓮華の準備を始めていた。
カカシは左目の写輪眼を覆い隠す額当てをぐっと持ち上げ、リーのチャクラの流れを確認する。
そして、
「第三・生門 …開!!」
その瞬間、リーの身体が赤く染まった。
「ハアアアアアア!!!」
更に第四・傷門が開かれる。
額には血管が生々しく浮き上がり、まるで血が沸騰しているかのように全身が更に熱く燃えたぎった。
リーの鼻からは血が垂れ、瞳孔は完全に開ききっていた。
地を蹴り駆け出したリーは、力も桁外れに強く、移動する度に地割れが起こり、礫と砂埃が舞い上がり、会場を茶色く染め上げた。
リーのスピードは速すぎて、肉眼では到底追いつけない。
勿論、我愛羅の武器である砂も全く追いついていなかった。
我愛羅が宙に浮いている姿が見えた途端、ドカッ!!と鈍い音が響いた。
我愛羅の体は宙に浮いたまま高速の連続攻撃を食らう。
―――ドガガガガ!!!!!!
リーはあまりにも速すぎるスピードで体術の雨を360度様々な角度から浴びせた。
攻撃を繰り出す度にブチブチと手足の筋肉が千切れる音がカカシの耳にもハッキリと聞こえる。
これ以上は危険だ、と思った時、彼は更に第五・杜門を開いた。