第67章 予選開幕-3-
拳と拳のぶつかり合い、手裏剣術もまるで互角。
短く吐き出される息も、どちらのものか分からないほど互いに混じりあっていて、戦いの時間が長引けば長引くほど同じ量の傷が互いの身体に増えていった。
両者の実力は拮抗していた。
試合が始まってから既に10分が過ぎようとしていた。
カカシも両腕を組み、困ったような表情で二人を眺めている。
「アンタと私が互角なんて、あるはずないわよー!」
「フン…見た目ばかり気にしてチャラチャラ髪伸ばしてるあんたと…私が互角なわけないでしょ!」
「アンタ!私をなめるのも―――大概にしろ!」
流石、女の子の‘’喧嘩‘’だ。
口が悪く、マウントの取り合い。
どこの世界でも、幾つでも、感情的になった女とは恐ろしいものだ。
遂に、いのはサクラの挑発に耐え切れず、腰にまで届く長いポニーテールの金髪を結び目からザクりとクナイで切り落とした。
その大胆な行動に、流石のさきも思わず目を見開いた。
いのはどよめく観衆の声も気にも留めず、そのままバサッとサクラの方に向かって切り落とした髪を投げ捨てた。
「こ……こわいってばよ…」
さきの隣で、ナルトは正しく顔を真っ青にしていた。
『髪は女の子にとってとっても大事な物なのよ…それを捨てるってことは…分かるやろ?』
「や、やりすぎじゃねーの…?」
さて、どうだろうか。
さきは口を一文字に結び、鼻からひとつ息を吐いた。
確かにただ感情的になっただけで無意味な行動なのだとしたら、これは単にやりすぎだ。
もし彼女が後悔しても、もう遅い。
でも…ここは試合の場だ。喧嘩をする場所じゃない。
何か考えがあってやったことなのだとしたら…大胆ではあるが、彼女は恐ろしい策士だともいえる。