第66章 予選開幕-2-
「ハア…ハア…っ」
『…カカシ!…何もされてない?!サスケくんは?!』
完全に大蛇丸の姿が見えなくなり、やがてその気配が消えると、張りつめていた空気が緩んでいく。
さきは、固まったまま何も出来なかった足をカカシの方へ向けて駆け寄った。
しばらくの間、カカシは荒い息をあげていた。
さきとは違い、目と目を合わせて対峙していたカカシだからこそ感じ取っていた何かがそこにあったのだろう。
雷切を発動していたにも関わらず、写輪眼を顕にしなかったのも、気が動転していたからなのだろうか……いつものカカシからは考えにくい冷静さを欠いた行動だった。
さきは心配そうな目でカカシの返事をゆっくり待った。
「…ああ……大丈夫だ。サスケも何もされてないよ。さっき封印が終わった所だ。」
『そっか…疲れちゃったんやねサスケくん…このまま病院へ連れてくの?』
「ああ、そのつもりだ…試合は?ナルトとサクラはまだ出番じゃないのか?」
『今は紅のとこの子と、音隠れの子が戦ってる。
自分の部下がこれから試合やっていうのに、あの人がわざわざ瞬身の術で姿を消したから、怪しくて追ってきたの』
「あぁ…そういうこと」
カカシは、床で静かに眠るサスケをそっと横抱きに抱えた。
「先に戻っててくれる?オレはサスケを連れていくよ。知り合いの暗部に見張りを任せる。
アイツらの試合までには戻るから」
先程までとはうって変わり、ニコりと優しく微笑むカカシ。
その表情に、さきも少しホッとした。
カカシの腕の中で眠る可愛い弟分が、これ以上の危険な目に巻き込まれないことを願いながら、その頬に優しく手を当てる。
『分かった。サクラちゃんも、ずっとサスケくんを心配してたから……この子をよろしくね、カカシ』