第66章 予選開幕-2-
『おかしいと思った…やっぱり、アナタが大蛇丸やったわけね、音隠れの上忍師…』
大蛇丸の背後から聞こえてきたのは、聴き馴染みのあるさきの声だった。
「あらあら…上手く撒いたと思ったけど…ここまで辿り着いたのね。彩火師さん…」
『アナタの行動は妙だった。…アナタが黒だという確証はなかったけど、大蛇丸の目的がサスケくんなら、彼がいる所に現れるかもしれないと思ってここに来たのよ。…そしたら、いた。』
近づく足音と共に、暗がりから徐々にさきの顔が浮かび上がるように見えた。
「くくくっ…あらそう……そう言えば」
そう呟いた大蛇丸は、いつの間にかさきのすぐ背後に移動していた。
『っ?!』
「あなたのその彩火の術…あなたが作ったんですってねぇ…更に探究心が唆られるわ」
「さき!」
もちろん狙いはサスケだろうと踏んでいた二人は、大蛇丸のまさかの行動に対応しきれなかった。
突然のことにさきは息をのむことしかできず、サスケを守ることだけに集中していたカカシも、空しくさきの名を呼ぶことしか出来ずにいた。
「いずれ…彼は必ず私を求める。力を求めてね…!!」
不敵な笑みを浮かべそう言った大蛇丸は、そのままクルリと背を向けて、再び暗がりの方へ歩みを進め始めた。
「…それに…カカシくん…君が私を殺すんだって……?
やってみれば?できればだけど…」
カカシは、自分の額や背に冷や汗が流れたのを感じた。
今の自分の実力なら、刺し違えてもヤツを殺せる…と思っていた。
しかし。…無理だ、と分かった。
暗闇に消えてゆく背中からは、何故か自分が一瞬にして殺されてしまうイメージが鮮明に浮かんでくる。
そしてその場から一歩も動くことが出来ないでいる事実。
(刺し違える?馬鹿か、オレは…!?)
『…ま、待ちなさいよ!…大蛇丸!!』
さきも、待てというものの、カカシと同じく、手を出すことが出来ないでいた。
それどころか、振り返ることもままならない。
大蛇丸はそんな無力な二人を相手にすることもなく、そのままスゥッと闇に溶けていくように、姿を消していった。