第66章 予選開幕-2-
カカシの声と同時に、血で書きあげた術式が呪印へと向かって動き始めた。
全身に走る呪印の拒絶反応の強い痛みに、サスケは、普段のサスケからは想像も出来ないような声で苦しげに叫び始めた。
「ぐあぁああ…」
必死にその痛みに耐え続けるサスケの姿は、カカシから見ても痛々しかった。
「ぐっ!……くっ!…ぐっ!」
数十秒ほど経過して、漸く全ての術式が呪印を取り囲むように描かれた。
カカシはそれを見届けてから、ぱっと呪印から手を離した。
サスケは息を荒らげたままで、倒れ込みそうになる体を、両腕で懸命に支えていた。
(……ま、よく気を失わなかったものだ。)
サスケの痛みに対する忍耐力、そして自分を保とうと必死だった精神力の強さにはカカシも太鼓判を押さざるを得ない。
「今後もしその呪印が再び動き出そうとしても…この封邪法印の力がそれを押さえ込むだろう。
ただし……この封印術はサスケ…お前の意思の力を礎にしている。
もしお前が己の力を信じずその意思が揺らぐようなことがあれば…呪印は再び暴れ出す」
サスケはカカシの説明を聞くなり、フッと意識を飛ばし、疲れ果てて気を失った。
あどけない寝顔にどこかホッと胸を撫でおろしたカカシは、一仕事終えたことに深いため息を吐いた。
(やはりギリギリだったようだな…。さて、そうしたら病院へ…)
気持ちを切り替え、眠るサスケを抱えようとしたその時。
背筋が凍るような妙な気配を背後に感じた。
「封印の法術まで扱えるようになったなんて…成長したわね…カカシ」
ザラザラとした掠れ声が静かな部屋に響く。
ゾワリと身の毛がよだつ思いがした。
――――――…まさか…
「…アンタは…」
「お久しぶりねカカシくん…」
―――――― 大蛇丸…