第65章 予選開幕

　―――――ゴドッ！！

　物凄い音を立ててヨロイが蹴上げられた。
　サスケはそれに合わせて地に手をつき、勢いよく飛び上がった。
　その場に居合わせた誰もが驚愕の眼で食い入るように見つめた。
　さきの手摺を握っていた手も、いつの間にか口元を抑えていた。



『…！カカシ…あれって』

「ガイの体術そのものだな…」

　その一連の動きは、何度か任務で見たことあるガイの体術のそれと一致する。
　いつの間に、どこで覚えてきたのだろうか。
　サスケは影舞葉でヨロイの背後にピタリと付いた。

「終わりだ……くらえ！」



　サスケが、何か体術の動きに入ろうとしたその時、彼の首元の呪印が少しの暴走を見せ始めた。
　瞬く間に、肩から腕や顔に広がりを見せる大蛇丸の呪印。
　まるで無数の蛇が這うように不気味な動きを見せるそれは、文字通り気味が悪かった。

　このままではアレに飲み込まれてしまう。

　試合を見守るアンコや火影様、そしてカカシも同じタイミングで気付いた。
　痛みを堪えるサスケの表情は歪み、ゴボッと血を吐きだした。
　被術者の体への負担は、それほどまでに大きいのか。



「ここまでか」

　カカシが小さく呟く。
　さきもいつでも場内に立ち入れるよう、悔しいながらも諦めに似た覚悟を決めようとしていた。

　しかし、試合が続行されるか、止められるかの瀬戸際……
　上忍たちが試合場内へ足を進めるほんの僅か数秒前。