第65章 予選開幕
隙を作ってしまったサスケの顎に、ヨロイの裏拳が入った。
「ぐォ!!」
瞬く間に体制を整えたヨロイ。
いまだに地面に背をつけたままのサスケに襲い掛かろうと駆け出した。
「サスケくん!」
サクラの悲鳴のような声が響く。
それにハッと反応し、サスケが起き上がろうとしたところで、ヨロイはさらに勢いよく詰め寄った。
額を鷲掴みにされたサスケは、いとも簡単に再び地面に背を付けられた。
『!!』
呪印が痛むせいで、力が出ないのか?とも思った。
でもそれにしては何か違和感を感じる。
だってサスケはちゃんと相手の動きに反応は出来ているのだ。
さきは顔をしかめたまま、隣に立つカカシに問いかけた。
『……なんかサスケくん、全然抵抗出来てないね…』
確かにさきの言うとおりだ。と、カカシは腕を組んだ。
その間にも、サスケは抵抗していたが、なぜかブルブルと痙攣を起こすような感じで手から力が向けてゆく。
カカシの鋭い観察眼は瞬時に状況を見破った。
「…アレが相手の能力か。チャクラを吸い取ってやがるんだ」
『…なるほど。それで体が思うように…』
腕十字を見事に決めたところではサスケが優位かと思われたが、ヨロイの華麗なる形勢逆転だ。
チャクラが尽きてしまえば、サスケは戦うどころか、体を起き上がらせることもできなくなったしまう。
早くも、呪印の力に頼るには絶好のチャンスが来てしまった。
しかし、もしもそうなればこの試合を止めなくてはならない。
さきはサスケの勝利と、その“もしも”が起きないこと願うしかなかった。
『無茶しやんでね…』
さきの手摺りを掴む手にも、ついつい力が篭もった。