第58章 好き
カカシはその声に、ピクッと軽く反応したかと思えば、その顔をこちらに向け、どこか眠たそうにも見えるたれ目を見開き驚いた。
「えっ…いたの?気配隠すのが上手くなったな…」
『え、そうかな…ただいま』
目と目が合うと、驚きで見開かれていたカカシのそれは柔らかい弧を描き、優しくニコリと笑った。
「おかえり。なんでここにいるの?」
『あぁ、さっき里に帰ってきて、家に帰ろうかと思ったんやけど…ここに来ればカカシが居るかなと思って』
さきカカシに少しだけ近付き、頬を描きながら照れ笑いする。
よくよく考えれば、おかしな行動だものね。
家に帰ればいつでも会えるのに。
『…で、来たらほんまに居た。 私の名前が聞こえたから、思わず答えちゃった…ハハ』
「オレもこの後家に帰るつもりだったんだけど…
わざわざここに来たってことは、何か用でもあった?」
『いや、別に用はないけど…』
さきの返答に、カカシは目をパチクリさせて、んん?と不思議そうな顔をした。
「けど何?家で待ってれば良かったのに」
その通りだ。
でも、さきは今まで口にはしてこなかったある想いに自身が満ちてゆくのを感じていた。
だから、少しだけ躊躇しながら、本音を正直に伝えた。
『……ここに来れば…家で一人で待ってる間にも、カカシに会えると思ったの』