第58章 好き
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―――――― 花ノ村滞在最終日…
「これが、木の葉の里行きの巻物です。内容は既に確認して頂いておりますので、どうか無事に火影様へ。」
『勿論です。 お世話になりました。』
村長より桃色の巻物を受け取ったさきは、深く一礼し、それを腰のポーチへ納めた。
予定通り花ノ村に滞在し、そして予定通り三人揃って帰宅の途へ着く。
今の所、何もかもが順調で、うまくいっている。
このままいけば木の葉に到着するのも完璧に予定通りだろう。
森の木々を軽やかに飛び移りながらかけてゆく。
任務に関すること以外はほぼ無言。
そんな中、さきのすぐ後ろについていた上忍が、隊列を乱してさきの隣に躍り出た。
「任務がスムーズですね、相変わらず。 さきさんと組むといつもこうだ。すごくやりやすい。」
『アハハ…たまたまでしょう? それに前の任務はカカシが隊長だったじゃないですか』
この上忍は、さきが下忍の頃からよくチームを組む忍だ。
前回カカシがいる時は何も言ってこなかったけど、なんかいつもやたらと自分を褒めてくることから逆にやりづらさを感じていた。
「謙遜しなくてもいいですよ。 あ、カカシさんと言えば…あの噂は本当なんですか?」
男は人差し指を立て、思い出したように問いかけた。
(え、なに噂って…)
こういった話は大概面倒くさいことしかない。
『……………なんです?』
さきは精一杯の間をおいて少しめんどくさそうに聞き返した。
「"あの"カカシさんとの仲のことに決まってるでしょ!みんな噂してますよ、二人のこと。 ぶっちゃけお付き合いされてるんですか?」
ああ思った通り。 予想的中。
(…めんどくさいなあ、もうっ…)
さきは心の中で泣いた。