第57章 mythology
「伝説…そうですね。今となっては全て、神話のような…正に言葉通り伝説となってしまいました。」
村長は少し遠く悲しい目をして語り始めた。
「あの大楠は、古より守られてきた神木のようなものです。
人々の心の拠り所であり、病を治し、恋路を助け、飢饉を救い、日照りを止め、雨を呼んだ… あれは全て本当の話なんです。 紛れもない事実。」
『え?事実って…』
そんな、まさか信じられない。
ただの大樹なのに。
さきは薄っすらと疑いの意を込めた目を村長に向けた。
「ふふふ。そりゃ信じられませんよね。 でも、本当に事実なんです。
この村はその巨樹には古くから関わっていましたから、間違いありません。」
『……そのことについて、詳しく聞いても?』
そう尋ねると、村長はおかわりの茶をさきと、自分の湯のみに注ぎ始めた。
「勿論です。この話は少し長くなりますので…そうですね、それでは…まず、この村の話からしましょう。」
――――――…