第56章 花ノ村
さきは、何と無しにあの御神木の話題を振った。
『村長さんは、木の葉の里にある大きな楠を知ってますか? えーと特徴は……と、とにかくとても大きい木なんですけど…』
いや、大きさと品種以外の情報が薄すぎる。
自分の説明の下手さに落胆しながら、えーとそれから…と言葉を探していると
「ええ。勿論知ってますとも。」
村長は意外にも早く、それも"知っている"と返した。
「あの楠は樹齢2000年を超える大楠。 あの楠は多くの人々を守ってきた…この村でも、とても大切にされてきた巨樹のひとつですよ。」
『え?あれはこの村で管理されてたんですか?』
「ええ。今ではこの村もこんなに小さくなってしまいましたが、昔はもっと大きな村だったんです。 沢山の一族が住んでいて、今よりもっと多くの植物を管理していました。」
『そうなんですか……
あの木には、伝説があるとかないとか…?私も聞いた話なので、詳しくは分からないんですけど』
さきは、自分が木の葉の里にやってきたその日、火影様が話してくださったあの伝説を思い出し、村長さんに尋ねた。
『管理されてたということであれば、あの不思議な話についても、知っておいでですか?』
―――――― この時は、本当に軽い気持ちで…
まさか、こんな話が聞けるとは思いもしなかった。