第56章 花ノ村
翌日、さきはカカシに『行ってきます』と告げてから、火影様の元へ向かった。
―――――― 里外任務の開始日だ。
三代目火影は、扉の前のさきの気配にいち早く気付き、「入れ」と一言促した。
入室した執務室には火影様ただひとり。
他の同行者はここにはいないのか…。
さきが大きな木製の火影机に近付くと、火影様は口から紫煙を吐き出し、話を始めた。
「さきよ、早速任務の説明を始める」
『はい』
「今回はお主を隊長とし、上忍一名、医療忍者一名のスリーマンセルでの任務だ。
中忍試験の準備に伴い、なかなか人員が割けんのでな…すまぬが、通常より一名少ない編成となる。
役不足ではあるが、Bランク任務だ。
行き先は花ノ村。ある重要な巻物を届けて欲しい。」
『花ノ村…ですか?』
聞いたことのない村の名だ。
里外任務では、宿をとったり、怪我の治療のために休んだりなどで、村に立ち入らせてもらう場合も少なくはない。
そのため、里外に出ることの多い中忍以上の忍であれば、火の国の大体の村の名は把握しているのが通常だ。
しかし、さきの記憶の中には"花ノ村"というものは存在していなかった。
「覚えがないのも無理はない。
医療従事者であればピンと来るものもおるだろうが… 花ノ村は住人も非常に少ない、火の国のとても小さな村でな。
そこの村人は植物の育成や知識に非常に長けている。
木の葉の里で使用されている薬草や薬品は、彼らの力あってこそのものなのだ。
今回、お主に届けてもらうこの巻物には、現在の里の薬品リストや植物のリストなどの重要な内容が記されている。
これを確実に村へ届けよ。
そして花ノ村からも同じく巻物を預かるはずじゃ。それを里へ持ち帰って欲しい。
中身の内容確認は同行する医療忍者に任せよ。」
『わかりました。』