第50章 目立ちたがり屋ヒーロー
ギギィン!!! と、刃の交わる音が鳴り響いた。
『何を斬りたいの?』
その交わった刃の持ち主の一人はさきだ。
さきは蛍丸を抜き、二人の太刀を同時に防いでいた。
その隙に、イナリとツナミさんをナルトが素早く助け出す。
狂いのない見事な連係プレーだ。
「くらいやがれっ!」
更にナルトは、さきが止めている二人の男の背後に自分の影分身を回り込ませ、思い切りその後頭部を蹴っ飛ばすことに成功した。
きゅう と伸び上がる悪党。
その二人の悪党は、さきがロープを使ってギチギチに縛り上げた。
ナルトとイナリは、その間にすっかり和解した。
ナルトは、カカシがよくナルトにもするように、ポンとイナリの頭に手を乗せて、「お前は強えーよ!」と明るい大きな笑顔で、勇気ある行動をとった彼を褒めた。
すると緊張の糸が解けたイナリは、感極まって泣き出してしまった。
泣くなと言われたのに…と言いながら、なかなか止まらない涙と格闘する。
「何言ってんの?お前?!」
ナルトはイナリの涙を見て、ニィっと満面の笑みを浮かべた。
「嬉しい時には泣いてもいーんだぜぇ!」
認められる幸せを知っているナルトだからこそ、これらの言葉に説得力があるのだろう。
イナリの目にはまた熱い涙がぶわっと湧き上がった。
しかしすぐに、前向きな表情へと変わる。
ナルトは、凝り固まっていたイナリの心を変えたのだ。
さきは二人のやり取りに、小さく笑った。
(人の心を動かす天才かよ、ナルトくんは…)
ナルトの姿はとても逞しく、頼もしく見えた。
『じゃ…そろそろ行こうか、ナルトくん』
さきは話を終わらせた頃を見計らい、ナルトに声をかけた。
「おうっ!!」
二人はカカシのいる、建設中の橋へ向かって駆けた。