第50章 目立ちたがり屋ヒーロー
『そんなに慌てないのっ』
さきはすぐにナルトに追いついた。
オレンジ色の肩を掴むと、そのまま彼はぐるりとこちらを振り返った。
「オレも今日から護衛だってカカシ先生が言ってくれたんだってばよ! 姉ちゃんも起こしてくれりゃ良いじゃねーかぁ!」
(んー…あー…なるほど。)
ナルトは眉間に皺を寄せ、悔しそうな表情を浮かべていた。
カカシに認めてもらえたのがよっぽど嬉しかったのだろう。
さきも、仕方ないなとため息をついた。
(こりゃ何も言ってもアカンね。留守番は無しかな~… とりあえずカカシたちと合流………)
と、そこまで考えていた矢先、ふと目線をやった十数メートルほど先のものに何か違和感を感じた。
『ん?…ちょっと待ってナルトくん』
さきは森の中に見えたその“何か“に嫌な予感を覚え、そちらに向かった。
「? なんだってばよ?」
ナルトもすぐにその後を追う。
そこで二人が見たものは、無数の刀傷を負った大きなイノシシの姿だった。
「さきの姉ちゃん、これ……」
ナルトもその異様な光景に思わず顔をしかめた。
『なんか、嫌な予感しかしないね… …ほら、見てあっちの方向』
さきは周囲を軽く見渡し、"あっち"のほうを指さした。
「刀傷があちこちに…… この方向ってば!」
『うん。急ごう』
二人は小さく頷き合って、駆け出した。