第50章 目立ちたがり屋ヒーロー
「じゃ!ナルトをよろしくさき。 限界まで体力使っちゃってるから今日はもう動けないと思うけど」
『わかった。みんな気を付けてね』
本日はカカシ率いる護衛組と、さき率いる留守番組での別行動だ。
というのも、昨日までの修行の疲れが限界に達したのか、あんなにやる気満々だったナルトが一向に目を覚まさないからだ。
さきはさっそく、タズナさん護衛組のみんなを送り出し、イナリくんと共に、ツナミさんの編み物のお手伝いを始めた。
(こういうの、得意でよかった。)
忍び業を生業としてからというもの、圧倒的にクナイや手裏剣などという物騒なものを手にする機会のほうが多く、棒針を扱ったのは随分と久しぶりだった。
純粋にその作業を楽しんでいたのもあるが、また冬が来たら、暖かいものを作ってあげたいな…と、ある人物を思い浮かべるさきの口角は自然と上がり、幸せそうな笑みが浮かんでいた。
「あらどうしたの?随分嬉しそうな顔ね」
ツナミさんはそんなさきの表情を見てくすくすと笑った。
その空間には、近々強敵との戦いが迫っているような緊張感は全くない。
拍子抜けしてしまうほど平和だ。
数時間そうして過ごしていると、漸くドッタンバッタンとナルトが物音を立てて起きてきた。
「あ!!姉ちゃんもいたの?! みんなは?!」
『おはよ。ナルトくんは今日は私と一緒にお留守ば…』
「やっぱな!やっぱな!オレ置いていきやがった!!」
いや、話聞こうよ。何度も言うけど!…という突っ込みを入れるような暇もなく、彼は寝間着から着替えるなり慌ただしく玄関から飛び出していってしまった。
『コラ!! 待ちなさいよナルトくん!!』
さきも慌てて立てかけていた蛍丸を掴み、ナルトのあとを追いかけた。