第46章 敵現る
―――――― ダン!!
再不斬によって、足場の樹木が勢い良く蹴られた。
同時に抜けた首斬り包丁を背に、フッと煙のようにその姿を消す。
そしてスゥ…と水の上に音もなく静かに現れた。
「忍法 霧隠れの術」
その声が響くのは、徐々に濃くなる霧の中。
それはどんどん辺り一面に広がり、カカシ達の視界を奪ってゆく。
「先ずはオレを消しに来るだろうが…オレも写輪眼を全て上手く使いこなせるわけじゃない…お前達も気を抜くな! さき、お前も決して無茶はするなよ…」
『……分かってる』
濃霧の中、不気味に再不斬の声が響いた。
「8ヶ所…」
続けて彼は全ての急所の名を挙げ、何処を狙って欲しいかを問う。
なんて悪趣味な人だろう。
恐ろしい問いかけと視界を奪われた焦り、そして浴びたことのない殺気に子供たちもどんどん緊張感を帯びてゆく。
カカシも、再不斬の殺気を上回る勢いでチャクラを練り上げ始めた。
その気はとても冷たく、呼吸ひとつするのも苦しい程に重たい。
カカシと再不斬、二人の気に当てられ、サスケはカタカタと肩を震わせる。
それに気付いた “カカシ” は、彼らの方を振り向くことなくして告げた。
「安心しろ。 お前達はオレが死んでも守ってやる。 オレの仲間は絶対殺させやしなーいよ!」
その顔は、彼らの上司としての決意とプライドが滲み出たとても良い笑顔だった。
(そんな顔して笑えるようになったなんてね。)
さきは彼ら三人に出会ってからというもの、日々目まぐるしく変わってゆくカカシの表情と心に強く安堵していた。
―――――――― でも、誰が死んでもって?
カカシは何があっても、私が絶対死なせない。
さきはカカシのすぐ傍でチャクラを静かに練り上げ始めた。