第42章 突破
「おかえり」
アパートの前でさきを待っていたのは、他の誰でもないカカシだった。
電柱にもたれかかるようにして立っていた彼の手の中には、相変わらず例の本がある。
さきとカカシが顔を合わせるのは、実に一ヵ月ぶりだった。
『ただいま!』
さきはカカシのもとに笑顔で駆け寄る。
ピンクブラウンの頭の上にポンと大きな手を乗せたカカシは、いつものようにひと撫でし、彼もまたニッコリと微笑んで「良くやったな。 お前はオレの自慢だよ…ホント」とさきのことを褒め称えた。
「一緒に帰ろうか」と、二人はそのまま揃って自分たちの部屋まで上がる。
部屋の中に入るなり、さきはすぐさま硬めのベッドの上に倒れ込んだ。
くん…と息を吸い込むと、ほのかにカカシの匂いがして安心した。
「疲れただろ。 よく頑張ったな」
倒れ込んでゴロンと横になるさきの隣にギシッと音を立てて腰掛けるカカシ。
『ありがとう…まさか優勝出来るとは思わんかったけど』
「すーごい目立ってたなあ」
『ホンマにね…私ああいうのちょっと苦手で…速攻帰ってきちゃった。 やっぱり自分の家が一番やね』
「そりゃ何せ一ヵ月ぶりだしねえ」
「うんっ帰ってきた~って感じする! お布団の匂いとか隣にカカシがいる感じとか…」