第41章 仙人との出会い
さきはその光の正体を鷲掴みにして勢いよく取り上げた。
『…痴漢』
「な、何をする! ワシは今大事な取材中だっての!」
『取材~? プロモーションビデオか何かでも撮ってるんですか? 水着の女性をこんなモノでニヤニヤ見たりして』
さきが見つけたのは、望遠鏡で滝壺で遊ぶ水着姿の女性を木の上から眺めて喜んでいる白髪のオジサンだ。
光っていたのは太陽に反射したこの望遠鏡のレンズ。
明らかに痴漢行為だ。
「ほう、ビデオか…それもアリだのぉ… ワシゃしがない物書き。 新作のネタ探しに真面目な取材をしてた所だ」
『へぇ~。 どんな本なんですかね? それは』
「例えばこれだのォ」
ゴツゴツとした大きな手によって差し出された一冊の本。
さきはしぶしぶそれを受け取った。
(アレ?…この禁マーク見覚えが…)
さきはハッと顔を上げた。
『…あぁ!これイチャイチャパラダイス!!』
「ほう! 女性にまで浸透しておったか! 有名になってきたのォ!!」
『…あなたこのしょうもないシチュエーションの本の作者さんですか?』
「しょーもないとは何だしょーもないとはぁ!!」
悪いけど、さきにとってイチャイチャパラダイスの物語に出てくるシチュエーションは正直好みではなかった。
一度カカシのをパラパラ読ませてもらった時にこれじゃ女の子は燃えねーよって思ったもの…。
「ワシは妙木山蝦蟇の精霊仙素道人。 通称ガマ仙人とお見知りおけ!』
『仙人はこんな本書かない気もしますけどね…… それで、お名前は? 私はさきといいます。 彼女たちと同じ女性として、痴漢してる人を放っておく訳にはいきませんので。』
「自来也だ……信じてないかもしれんが、仙人なのは本当だのォ。 因みにこの本の作者もワシで間違いない。」
さきにとって自来也の第一印象は、「なんだかちょっと面倒くさそうな人」だった。
朝から水着の女性を見て鼻の下を伸ばしているくらいなのだから相当暇なのか何なのか…とにかく胡散臭かったのだ。
『そうですか。 なら、自来也様と呼ばせてもらいますね。』
これがさきと自来也の最初の出会いだった。