第36章 手合わせ
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________ 四半時(しはんとき)程前のこと。
本日の第七班の任務と演習が終わり、「今日はかいさーん」とカカシが緩く手を挙げ指示を出した直後だ。
たまたま任務帰りにその近くを通りかかったさきに気付いたナルトが彼女に駆け寄り、声を掛けた。
「姉ちゃーん!! 今任務帰りか?」
『ナルトくん…サスケくんとサクラちゃんも!』
「カカシ先生もいるわよ!」
『ほんまや!今帰ってきたとこよ。 皆も任務終わった?』
「ああ! 今日は任務の後、チームワークの基礎!鈴取り演習をやってたんだってばよ」
『そう!どうやった? 鈴は取れた?』
その問いに、ナルトはむぅ~っと唇を尖らせ、サスケは「…いや」と答えた。
「それが全然。 サスケくんはいつも惜しい所まで行くんだけど…カカシ先生ったら…」
サクラはサスケのことをまるで自分の事のように誇らしく語り、カカシの飄々とした余裕のある動きを口にしては悔しがった。
ナルトはサスケより、なかなか体が思うように動かないことに苛立ちを感じていたようで、今後の修行への意気込みを語った。
『そう。 皆頑張ってるんやね』
そんな彼等の話を聞くさきは、まるで全員の姉、或いは母親のような優しい表情で、結果がどうあれ“チームワークを深める”という観点から皆の成長を正に感じそれを心から喜んでいた。
「姉ちゃんは鈴取り演習、カカシ先生とやったことあんのか?」
『そう言われてみれば…ないかも?』
さきは顎に指を当てて、小首をかしげた。
修行を付けてもらうことや組手をする事は以前からよくあることだったが、例の鈴取りについては今まで一度も経験がなかった。
さきのその目線の先には、少し向こうの方で赤色の本を読んでいるカカシ。
突然思い立ったように、さきはニヤリと挑戦的な笑みを頬に浮かべた。
『よしっ! 私が皆より先に鈴をとってくるよ!』