第1章 真夏の旅人
『カカシさんは?少しくらい、自己紹介して欲しいです』
さきはコップの茶を手に問いかける。
「あ、オレか? オレははたけカカシ…キミと同い歳で25歳だよ。 木ノ葉隠れの里には、下忍から上忍まで階級分けされた忍が沢山いてね。 その中の上忍の一人がオレってこと。」
『へぇ凄い。ほんまに忍っておるんや…』
例えば珍しい食材や、高価でなかなか手に入らない宝石なんかをみるように目をキラキラと輝かせながらこちらをみるさき。
忍を知らない世界って逆にどんなもんかね。
カカシからするとそちらの方が不思議でたまらない。
「ま、オレたち忍は火影様から与えられた任務をこなして生活してるってわけ。 つまりお仕事。 だから、キミをこうして部屋に連れ込んだのも、面倒見るのも、来た方法や帰り方を探すのもお仕事ってわーけ。」
『……なんかそれ感じ悪いです…』
さきはじっとりとした目でカカシを見たが、それも事実なのだから仕方ない。
「さきさんの世界には忍はいないの?」
今度はカカシの方から気になっていた質問を投げかける。
『いないというか、なくなりました。 それもすっごい昔、数百年とか前じゃないかなぁ。』
「ふ~ん…キミの住む国や地域を脅かす存在はいないのか?」
『いや、確かにちょいちょい悪い人はいますけど、そんな大それた悪人はなかなかいないです。 殺人、脅し、万引き…なんでも悪いことすれば捕まりますからね。 めちゃくちゃ治安いいですよ。世界的に見ても。』
「そうなんだ…」
不思議な世界があるものだ。
きっと、戦争だってないのだろう。
もしオレが彼女の世界で生まれ、生きていたのなら、
大切な人たちを失わずにすんでいたのかもな…この手も血に染まらずに…
カカシはぼんやりとそんなことを頭に思い浮かべた。