第1章 真夏の旅人
「どうぞ、入って」
『お邪魔します…』
おずおずと部屋の中を警戒しながら1歩ずつ歩みを進める。
「早く上がってちょーだい。 誰かに見られたら、見知らぬ女連れ込んでるって思われるでしょーよ。」
いや、あんたらが勝手にそーしたんでしょーよ。 と、心の中で突っ込みつつも、さきとしてもその被害は御免被りたいと思い、ぱっと室内に入った。
『へぇ…男性の部屋にしては綺麗』
「ま、一応整頓はしてるからね。 とりあえず座れば?お茶と水、どっちがいい?」
『あ。じゃぁ…お茶…』
なんだか友達の家に初めて遊びに来たような感覚だ。
すごく綺麗に整頓された部屋。 いい香りもする。
部屋の隅にとても美しく畳まれた服からするに、あぁこの人は、とことん極めきる完璧主義者なんだなと気がついた。
「それで…」
ローテーブルの上にお茶の注がれたグラスを2つ用意しながらカカシは言う。
「さきさん、だっけ?もう少しキミのこと教えて貰ってもいいかな? 住まわせるんだから、オレにも知る権利ってもんがあるよね?」
そりゃ、そうだ。
見ず知らずの人間を突然家に泊めるということなのだから、間違いない。
『あ、えっと…名前はさっきも言ったけど、夜野さきって言います。 年齢は25歳。 誕生日は12月11日。 血液型はO型。 趣味はハンドメイド小物を作ること。 仕事もハンドメイドとネイルアートを少し。 家族はいません。』