第1章 真夏の旅人
さきを連れてきた男は、じっとりとその様子を窺う。
『あなたは…』
女はそう口にしながら身体をおこしたかと思えば、次は小刻みに震え始めた。
先程までの威勢は一体どこに行ったというのか。
『ご、めんなさい…私が何かしたのなら謝ります。命は…お、惜しくありません。 でも…し、親友や周囲の人たちだけには、手を出さないでください…』
それを聞いた火影はほっほっほと笑い始めた。
ひとしきり笑ったあと、パイプに火をつけ、すぅっとひと口吸い込む。
紫煙が綺麗に整えられた髭のある口から、ふうっと吐き出された。
「そうじゃの…まずはお主の素性を知ってから判断することにしよう。 名はなんという。何処から来た。」
「火影様、何かあってからでは遅すぎます。まずはしっかり投獄した上で話を…」
「カカシよ、ここで構わん。」
そう言われてしまっては、いくら反論してもこの御方は言うことは聞かない。
カカシはその次の言葉を飲み込み、彼女の声を待った。
『名前は…よ、夜野さきです…大阪に住んでいます』
「おおさか、とな?…聞いたことの無い土地じゃ。 どこの国にある?」
『え…大阪は日本でしょう?あ、貴方も日本語を話してるじゃないですか。 第二の都市の大阪を知らないはずないじゃないですか?』
謎が謎を呼び、室内はシン…となる。