第2章 胡蝶蘭~すべてのはじまり~
天幕の中では、信長たちの話をただ聞いていた。
ただ事のようではないと諭した物静かな子が皺を寄せていた。
「ねぇ、紗和。今、『明智光秀』『豊臣秀吉』とか言ってなかった?」
「うん、聞こえたよね...なんかの時代劇かな...」
「......」
「りっちゃん、大丈夫...?」
「動けそう?」
「大丈夫...これくらい何ともない」
怪我の痛みが体中に走るが心配をかけるわけもいかず、答えた。
今どうしてここにいるのか、織田信長と名乗るあの人は誰なのか...今どこなのだろうかと物静かな子は考えていた。
多分、現代ではないじゃないかと仮説を立てていた。
「...よろしいでしょうか?信長様がお待ちなので着替えが出来ましたら天幕からいらっしゃってください」
三成だ。
紗和や愛心は返事を返したが、りっちゃんと呼ばれた子は怪我で動きたくなかったらしく、顔を伏せていた。
「りっちゃん、行こう?」
「うん...」
「でもさっき騒いでたよね...大丈夫かな」
不安げな二人にもうひとりは静かに手を握った。
「「!!」」
「たぶん、悪いようにはされない...」
「「りっちゃんが言うならそうだね!」」
そう言い、ふたりは勢いよく天幕を出た。
しかし、りっちゃんと呼ばれた子は顔を歪め、もらったお召し物を着ようと少しずつ動いていた。
ただ、その傷がなにかに触れる度痛む為、なかなか進まなかった。
やっとの事で着終わり、天幕から出るとそこには何人かの男の人がいた。