第3章 胡蝶蘭~嫌がらせと久しぶりの対面~
「...御館様、六花様をお連れ致しました」
「入れ」
「...どうぞ、姫様」
「あ、はい...失礼致します...」
そう言い、襖を開けると、安土城に来た以来の顔ぶれ。
どうすればいいか分からずに、広間に入り、織田信長の前に正座した。
「近う寄れ」
「あ。はい...」
言われたままに近づくと顎を掴まれた。
その時、ビクついた。
織田信長の瞳は燃えるような深紅で見透かされるのでないかと思った。
「あれ以来になるのか」
「え?」
「貴様に会うのは安土城に連れてきて以来か」
「はい...そうですが...」
戸惑った。
なぜ呼ばれたのかわからなかったからだ。
信長も含め、接点がほぼ無かった武将の前で顔を伏せるしか無かった。