第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
「案ずるな。甘露寺の分もある」
師範はそう言うと、私に手渡したものと全く同じ箱を懐から取りだした。
私が案じてるのはそこではなく金銭面なのですが。
「い、いえ……あの、ありがとうございます師範。私のためにと買ってきてくださったのがとても嬉しいです」
ハートの形のちょこれいとは、とても可愛らしい。食べるのが勿体ないくらいだ。
「今日中に食せよ。どうやら溶けるらしい」
「え!?溶けちゃうんですか!?」
こんなにも可愛らしいから、しばらく飾っておきたかったのに。現実とは何とも残酷だ。
「俺はこの後甘露寺に届けてくる」
師範はそう言いながら、とろろ昆布汁をズゾゾ……と飲みほした。
「お前も来るか?甘露寺と仲が良いのだろう」
「え、私もご一緒して宜しいのですか?」
正直このお誘いは意外だった。蛇柱は恋柱にご執心である、という噂は常々聞いているし、本人もいつも甘露寺甘露寺と言っているからだ。