第2章 失いたくないあなただから
「お前は一人で風呂場へ行けないだろう。
介助が必要だ。そうだな?」
「え?ええ、はい。そうです……ね?」
「だがお前は絶対に俺を先に入らせようとするだろう」
「はい。そうですね」
「なら共に入った方が効率が良い」
うん、理屈は分かりました。理屈はね。
「で、ですが師範!」
「なんだ」
師範はまだ話すのかと言いたげに眉根を寄せているが、女としてはやはり自分の大事な所をそう易々と見せることができないのですよ。なにせ、恥ずかしいですからね!!
「まだ私たちは、その、口付けもしていないですし、閨事(ねやごと)もしておりません……い、いいいきなりそんな裸を見せるなど、は、恥ずかしいといいますか……!」
「……。では俺は目隠しをしよう」
「……はい?」
「見なければ良いのだろう?」
もう話は終わりだとでも言うように、
師範が近付いてきて私を抱えあげる。
もう覚悟を決めるしかないようだ。