第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
「師範、これはなんでしょうか」
「開けてみろ」
促されるまま箱を開けてみると、黒い物体が一つだけちょこんと箱の真ん中に居座っていた。
「んん?」
何やら仄かに甘い香りがしなくも無い。
クンクンと匂ってみると、やはり甘い匂いがしていた。
「西洋の菓子、ちょこれいと、と言うものらしい。」
ち、ちょこれいと!?これが巷で有名な
西洋のお菓子、ちょこれいと!?
「し、師範!これ、凄く高価なモノでは─」
「お前が甘い物が好きだから買ってきたのだが。いつも家事をしてくれている礼でもある。……気に入らなかったか?」
師範はコテンと首を傾げて私の言葉を遮る。
私は「ぐっ……」と奇妙な声を上げることしか出来なかった。その仕草、かわいい。