第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
「……は?」
師範は目をまん丸にしてこちらを見ている。
「かわいい人、と言ったのですよ師範。私を、貴方のものにしようとしたのでしょう?でも、貴方は優しいからできなかった。」
こんな事、してもいいのか迷ったけれど、師範が私を想ってくれていて、私も師範が好きならば問題ない。
師範の細い首に両腕を回して抱きついた。
「……!?」
「私も、師範が好きです。」
「……っ!」
「一目惚れでした。そして直ぐに師範の継子として一緒に暮らせて、毎日嬉しかった。でも、この気持ちは伝えてはいけないと思っていたのです。でも、伝えて良いのならば、隠さず伝えます。好き、師範……好き。好きです。」
師範も私の体にその細い腕を巻き付けてギュッと抱きしめられた。
「俺は蛇のように執拗いぞ。お前が離せと言っても離してやれない。それでも良いのか、覚悟はできているのか」
「貴方の継子となった時から、全てにおいて覚悟はできています。」
「っ、……!!やっと俺のものにできた。もう離さない。離してやるものか……!」
さらに強い力で抱きしめられ、師範がどれだけ私の事を想ってくれていたのか痛いほど伝わった。
私も、大好きですよ伊黒さん。
──その後、先程すれ違った老夫婦が戻ってきて「まぁ!今度はらぶらぶじゃ!」「羨ましいのぉ婆さんや」「私達もやりますよ爺さんや!」と言いながら去って行ったので慌てて離れたのはここだけの話
~完~