第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
「冨岡様のようなことを仰らないで下さい」
「冨岡……だと!?いつ俺が冨岡のようなことを言った!アイツと一緒にするなおぞましい!」
師範、本当に冨岡様の事嫌いですよね、あんなに脈略ないこと言って可愛らしいのに。
「とにかくですね、師範の優しさは伝わっておりましたが、その、恋慕は分かりませんでした。」
「……お前を俺の屋敷に住まわせている以上に何か必要だったか?俺はそれが何よりの証拠だと思っていたのだが。だが、お前に別の想い人がいるのならば、無理して俺の屋敷に住むこともないと思っていた……」
私を屋敷に住まわせているのは、そういう理由だったの……?
「お前を継子にしたのも下心あっての事だ。だから言っただろう、お前が乙(きのと)止まりで申し訳ないと言ってきた時に、それでも構わんと。お前が俺の屋敷で待ってくれているだけでいい。」
私を継子にしたのが才能を見出したからではなく、下心からと言ったかこの人は。
なんて、
──なんて
「かわいい人。」
私の口から出たのは、そんな言葉だった。