第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
「お前は一体俺の何を見ているのだ!
人の話ちゃんと聞いていないではないか!」
人差し指を額でグリグリと押されて凄く痛い。
いやどう聞いてもどう見ても、
師範が蜜璃ちゃんに恋しているのは一目瞭然では!?
誰が見ても誰が聞いても師範の好きな人は蜜璃ちゃんだと答えますよ!!
「おやおや痴話喧嘩かねぇ……」
「若いねぇ……なぁ婆さんや」
「羨ましいですねぇお爺さんや……」
私達の長椅子の後ろを、ヨボヨボした老夫婦がニヤニヤしながら通っていき、師範が固まる。
そして、はぁ……と大きなため息を吐くと、師範は私の隣に座り直した。
「俺なりにちゃんと伝えているつもりだったが、どうやら全く伝わっていなかったようだな」
私はそれどころではなく、師範に突き刺された額がジンジンと痛んで、涙目でさする。