第6章 ❀何度でも教えてください
その時、
「あら?ちゃんじゃない?」
鈴の音の様な軽やかで可愛い声がして、そちらを見ると友人の甘露寺蜜璃が立っていた。
「蜜璃ちゃん!」
「珍しいわね、ちゃんが一人で街にいるなんて。……あら?」
蜜璃ちゃんが私に近づいて、隣にちょこんと座る小芭内さんを見る。
「まぁ!まぁ!伊黒さんじゃない!子供になったって本当だったのね!?かわいらしいわ!とっても!」
キャー!と叫びながら蜜璃ちゃんがおにぎりを食べ終わった小芭内さんを抱き上げる。
むむっ、小芭内さんを抱っこするのは私の特権なのに。
「かっ、甘露寺やめっ……」
「かわいいわぁー!とってもかわいい!」
あああ、頬にスリスリするのも私の特権なのに……いくら蜜璃ちゃんでも、小芭内さんは私の夫だからやっていい事とダメな事があるのよ…
「きゃ!ごめんなさい私ったら……子どもの姿になったとはいえ、伊黒さんはれっきとした男の人なのに…。」
ようやく我に返った蜜璃ちゃんが小芭内さんを解放して長椅子に降ろした。小芭内さんはホッと息を吐いている。
「ちゃんもごめんなさい、伊黒さんはちゃんの旦那様なのに失礼なこと…」
「ううん、気にしないで蜜璃ちゃん。
小芭内さんすごく可愛いし仕方が無いよ」
慌てて取り繕って笑顔を向けた。
それを小芭内さんが横目で見ていたなんて気付かずに──。