第9章 さよならの定義
「何?」
『育てればいいんだよ。悟と肩を並べられる、強く聡い仲間をさ』
なまえの唐突な発言に、五条は思わず眉を顰めた。
「は?」
『だから、最強の悟が育てるの!最強の教え子を!』
「…いやぁ、さすがにその発想はなかったわ」
『でしょー?名案だと思わない?』
きらきらと瞳を輝かせながらそう言うなまえに、五条は呆れたように訊ねた。
「オマエさぁ、それ本気で言ってる?俺に向いてると思う?」
『んーどうかな。まぁ、向いてるかどうかはわかんないけどさ、』
「…うん」
『ーー私は、結構似合うと思うよ、“五条先生”』
そう言って、なまえは笑った。
夕陽に負けないくらいに光る眩しい笑顔に、五条は思わず目を細める。
―――どんなに暗くて、深い闇のなかでも
どんなに暗くて、深い闇に堕ちそうになっても
この眩しい光が照らしてくれる
きっと彼女がいる限り―――俺が道を間違うことはないだろう。
そう心に思って、五条はくしゃりと笑った。
「オマエがそう言うんなら、悪くないかもね」
『でしょ?ついでにこの腐った呪術業界ごと一新しちゃいなよ』
「それイイネ」
『でしょ。頑張って、五条センセ』
「……うん、じゃ、決めた」
『なにを?』
「まだナイショ」
―――"「2~3年後に、俺の息子が禪院家に売られる。好きにしろ」"
星奬体の件で、自分を殺しかけ、そして自分が殺した男。伏黒甚爾の最期の言葉。五条は彼の言葉を思い出し、そして、決めた。
『ふーん?あ、でも、私は悟みたいな先生パス』
「は、俺だってオマエみたいな生徒は御免だね」
はは、と乾いた笑い声が、夕陽の落ちた暗い夜空に響く。