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【呪術廻戦】廻る日の青

第8章 slow dance





「なまえは非術師をどう思う?」

『……え?』


突然の夏油の問に、反応が一瞬遅れる。
暗い校内の廊下で、二人の間にしんと静かな空間が流れた。そんな沈黙を破ったのは夏油だった。


「――弱者生存。それがあるべき社会の姿。弱きを助け強きを挫く。呪術は非術師を守るためにある」

『……。悟が聞いたら、俺正論嫌いなんだよねなんて喧嘩になりそうな話題だね』

「はは、正解。前に一度、それで喧嘩したよ」


過去を懐かしむようにそう言う夏油の横顔は、このままどこかへ消えていってしまうんじゃないか、なんて思ってしまいそうなほど儚げで。どうしてそんな事を聞くのか、だとか、最近元気がない事と関係があるのか、だとか、聞きたい事はたくさんあったけれど、今それを聞いたところで彼はきっと答えてはくれないだろう。なまえは夏油達と共に過ごした時間を振り返るように思い出しながら、ゆっくりと口を開いた。


『そればっかりは、不本意だけど悟に同意。だって、それが正論だとするなら、呪術師は非術師のためにいるの?そんなの違うでしょ。呪術師だって非術師と同じ人間だよ。それぞれ守りたいものがあって当然だし、守りたいものの形は人それぞれ違う』

「………」

『私の死んだお兄ちゃんの夢はね、最強の呪術師になって、助けを待つ人達を守る事だったんだ。私はそんなお兄ちゃんの夢を叶えたくて術師になった。今でもそれは変わらないよ。でも、助けを待つ人たちがみんな非術師とは限らないだろ?呪術師だって、呪霊が見える普通の人とは少し違う人達だって、助けを待ってる人はいる。私がそうだった。私はね、傑や、悟や、硝子に、救われたんだ。ひとりぼっちだった私に、居場所をくれた。たくさん助けてもらってきた』


なまえは懐かしむようにそう言ってから、傑の瞳を見つめながら続けた。


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