第7章 不協和音
それからも変わらず五条からの連絡はなく、最終日を迎えた。
呪術連に別れの挨拶をして、東京に戻る飛行機の中。なまえは窓から見える空をぼーっと見つめていた。なんだか妙な胸騒ぎがして、落ち着かない。フライトの時間が、やたらと長く感じた気がした。
空港について、飛行機を出てからすぐに携帯に電源を入れる。
着信が何件か入っていて、発信源は硝子からだ。慌てて掛け直したけれど、留守電に繋がってしまった。とにかく早く高専に戻ろう、と早足でキャリーケースを引いて出口を出た、ときだった。
「―――なまえ」
そこにいたのは。
『………、さと、る……?』
「よ。久しぶり」
出口で待っていた人物に、なまえは思わず目を見開いた。
確かに彼なのに、どうしてか、一週間前に会った時とは何かが違った。確実に、”何か”が。その何かが一体何なのか、この時のなまえには見当もつかなかった。
『……久しぶりって…、…ほんの数日じゃないか』
「…そうか。そうだね」
彼の返答に違和感を覚えて、なまえは問う。
『……悟……、大丈夫?』
「大丈夫だよ、俺は」
その言葉にも少し違和感を覚えたが、なんだかその時は、あまり深く聞いてはいけないような気がして。
『………、』
「なまえはダイジョブ?なんかされなかった?」
『……え?…ああ、うん…私は大丈夫だけど――』
言いかける言葉を遮るように、ふわり、とそのまま身体を抱き寄せられたかと思えば、気づけばあっという間に五条の腕の中だった。いつもの彼の匂いに、似合わない血の匂いが、確かに混じっていた。
僅かに感じていた嫌な予感が、確信に変わった気がした。しばらく沈黙が続いたあと、五条はなまえの耳元で小さく言った。
「俺さ、死にかけたんだよ」