第7章 不協和音
「ねぇ、行くの辞めれば?」
翌日。
来るなとしつこく言ったにも関わらず空港までついて来た五条が言った。なまえはその言葉に振り向きもせずに、自動販売機でジュースを選んでいる。
「このまま俺と愛の逃避行しちゃう?」
無視を決め込むなまえの顔を上から覗き込むようにして五条がそう続ければ、なまえは呆れたようにようやく口を開いた。
『馬鹿なこと言ってないで早く任務行けよ』
「じゃあなまえも一緒に行こ」
『だから行きたくても行けないの!バックれでもしたら高専の上の連中に何言われるかわかったもんじゃない』
「はー、そんなの関係なくない?俺と傑がいればなんとかなるって。俺達最強だし」
『まぁそれは否定しないけど。でも、たかが数日で帰ってくるんだから別にいいじゃん。何がそんなに嫌なんだよ』
ジュースを飲みながらそう言うなまえに、五条は不貞腐れた顔で言った。
「心配してんだよ。オマエ呪術連嫌いだろ」
『…嫌いなわけじゃないよ。確かに研究だなんだってしんどい思いをしてきたのは事実だけど、一応長年育った場所ではあるわけだしね』
言いながらなまえは、背の高い五条を見上げて微笑んだ。
『心配してくれてありがと、悟』
なまえの柔らかな笑顔に、五条は観念したとでもいうようにはぁ、とため息を吐いた。
「…お土産買ってこいよ」
『うん』
「電話も出ろよ」
『うん』
「メールもしろよ」
『うん』
「いい加減俺のモノになって」
『う……って何ノリで言わせようとしてんだよ』
五条がいつまでも駄々をこねていたせいで、手荷物検査の最終時刻を知らせるアナウンスが鳴り響いた。