第4章 繋ぐ日の色
『………はぁ』
校舎の裏にある休憩所のベンチに腰掛けながら、なまえは小さくため息を吐いた。
空はこんなに晴れているのに、彼女の心はどんよりと暗く曇っている。
――呪術高専に来てから、約四ヶ月。最強になる、なんて散々息巻いておきながらこのザマだ。本当に自分が情けない、と改めて実感して泣きたくなった。
任務はある程度こなせているし、成績も良い。既に昇級の推薦も受けているし、一年生にしてはかなり優等生だと言えるだろう。けれど、なまえが目指している道は、”誰よりも強く”いること。五条と夏油に、組手ですら勝てないようでは、最強への道は程遠い。
兄が目指していた道の険しさを痛感しながら涙ぐんでいれば、ふと、懐かしい声がした。
「――やあ、なまえ」
その声に、思わず立ち上がる。
笑顔でヘルメットを持ちそこに立っていたのは、特級呪術師――九十九由基だった。
「どうだい、呪術高専は」
『由基さん。お久しぶりです』
ぺこりとお辞儀をするなまえに、九十九は続けた。
「久しぶり。なんだ、せっかく呪術連から開放してやったってのに、随分浮かない顔だね」
九十九の言葉に、なまえはむすっと頬を膨らませる。
『同級生に、クソみたいに強いやつが二人もいるんですよ。そのおかげで、頭の中で描いてた学園ライフとは真逆のクソみたいな毎日です』
「あっはっは、それは結構。青春を謳歌しているようだね!」
『私の話聞いてました?』
「今年の一年は豊作らしいじゃないか。反転術式、呪霊操術、そして……いるんだろ、君と同じ、”特別なモノ”を持つ者が」
『………。無下限呪術、六眼。目の前で何度も見ましたけど、別格でした。特別なモノでも、全然別物ですよ。私の持ってるモノなんて、あいつに比べれば足元にも及ばない。それを毎日思い知らされて、ホント、クソみたいな気分です』
「そうか。楽しそうで何よりだよ、なまえ」
『………』
本当に全く話を聞いていないな。反論するのも面倒くさくなって、なまえは代わりにため息をついてから、続けた。