第3章 午前0時のシンデレラ
「アハハハハ、この写メ何回見てもマジうける」
一年の教室で、硝子の愉快な笑い声が木霊していた。
夏油はそんな硝子の携帯を後ろから覗きこむと、感心したように言った。
「よく撮れてるじゃないか」
携帯の画面に写っているのは、先日五条となまえが行ってきたTDLでの写真だ。二人はお揃いの耳付きカチューシャをつけて、画面に向かってピースをしている。
「あれ、夏油この写メもらってないの?」
「もらってないな。悟からメールは来たけど、食べ物の写真しか送られてこなかった」
「ふーん?ま、なんだかんだ仲良くやってるよねーこの二人。つーかこの五条かっこつけすぎじゃね?なまえのこのぎこちない表情見てよ、あー本当可愛いなぁ抱き潰したくなる」
「…硝子、お前なまえをどんな目で見てるんだ」
怪訝な顔で夏油が硝子を見つめていれば、教室の外からいつも通り騒がしい声が聞こえてきた。
「オマエ今日こそはマジぶっ殺す」
『殺せるモンなら殺してみやがれバーカ』
「泣いてチビっても知らねーぞバーカ」
高校生とは思えないくらい知能指数の低すぎる言い合いをしながら教室に入ってきたのは、言わずもがな、画面の中では仲良さげに写真に写っていた五条となまえである。
「毎日毎日飽きないねー。TDLで仲良しこよししてきたんじゃないのかよ」
硝子が呆れたように言えば、なまえがすかさず反論する。
『聞いてよ硝子!コイツゲームのデータが消えたのを私のせいにしてくんの!』
「あ”?どう考えたってオマエのせいだろオマエ以外に誰がいんだよ」
『テメーがあんなトコにソフト裸で置いておくからだろ!?どう考えたってだらしないテメーが悪いだろうが!』
「はぁー?俺はちゃんとゲーム置いてあるからって言いましたーつぅかソフト踏んでぶっ壊すってどんだけ重いんだよマンモスかよ」
『コイツ絶対殺す!!』
べーと舌を出して小馬鹿にしている五条に向かって怒り狂って暴れるなまえを、夏油が後ろからなんとか抑え込む。