第16章 因中有果
「―――わざわざ貴重な指一本使ってまで確かめる必要があったかね。宿儺の実力」
「―――中途半端な当て馬じゃ意味ないからね。それなりに収穫はあったさ」
「フンッ。言い訳でないことを祈るぞ」
「それで。つまり君達のボスは今の人間と呪いの立場を逆転させたいと、そういうわけだね?」
「少し違う。人間は嘘でできている。表に正の感情や行動には必ず裏がある。だが負の感情、憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ―――真に純粋な"本物の人間"なのだ。偽物は消えて然るべき」
火山頭の呪霊がその一つ目をぎらりと鋭く光らせるようにそう言えば、向かいに座る袈裟を着た男が、穏やかに答えた。
「現状消されるのは君達だ」
「だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?」
「戦争の前に3つ条件を満たせば勝てるよ」
「何だと?」
「五条悟を戦闘不能にし両面宿儺虎杖悠仁を仲間に引き込む。それが最低条件。最後の1つは五条なまえをこちら側に"取り込む"事」
「?死んだのであろう?虎杖というガキは」
「さあ?どうかな」
「……五条なまえという女に呪術師も貴様も何をそこまで拘る事があるのか解せぬ。あの女がなし得るのはただの術式の模倣であろう」
「彼女の本来の術式はそんなものじゃないよ。高専側はまるで解っていない、彼女の正しい"使い方"を。上手く使えることができれば君達の理想の世界作りにうんと役に立つだろう。まあ、五条悟がいる限り彼女に触れる事は愚か近づく事すら難しいけどね」
「フン……五条悟……やはり我々が束になっても殺せんか」
「ヒラヒラ逃げられるか最悪君達全員祓われる。"殺す"より"封印する"に心血を注ぐことをオススメするよ。彼を封印することができればなまえを取り込む事も格段にやり易くなる」
「封印?その手立ては?」
「特級呪物"獄門疆"を使う」
「獄門疆…?持っているのか!!あの忌み物を!!」
「漏瑚。興奮するな、暑くなる」
「―――"夏油"。儂は宿儺の指何本分の強さだ?」
「甘く見積もって8.9本分ってとこかな」
「充分。獄門疆を儂にくれ!!蒐集に加える。その代わり―――五条悟は儂が殺す。そして五条なまえを連れ帰って遣る」